春は嫌いです。

私の親しい人は、みんな春にいってしまいます。

みんな、あったかくなってきた頃にいってしまいます。


今日も、祖母がいきました。

81歳、先にいった祖父の誕生日翌日でした。

会いに行ってすぐ、今朝でした。


その時が近いことはわかっていました。

だから、わざと逃げていました。

祖母がいってしまうのを待ち構える真似はしたくなかった。

だから、わざと離れた所にいました。


今日は、私だけ我が家の番で家にいます。

昼にかけつけたのと、明日説明会があるためです。

今ひとりで、家にいます。

祖母を想って、ひとりで家にいます。



私が後悔は嫌だ、と思うのは、

いろんな人をなくしたからだと思います。

その人がいなくなってから、自分がいなくなってから、

それじゃ遅い、と思うようになったから。

だから、自分の気持ちを人に言ったり、

自分のしたいことをしたり、

そういう性格になった。

遅いと思っては、もう取り返しがつかない。



私は、祖母に何かを残せたんでしょうか。

あの世に向かう途中、祖母は私を思い返してくれるでしょうか。

体力もあって、器量もあって、料理もうまくて、

そんな祖母に何か残せたんでしょうか。

あのおせちも、あのハヤシライスも、

もうさようなら。

祖母は、いってしまったから。


だから、春は嫌いです。

大嫌いです。